「熊は冬眠中、体温が何度くらいまで下がるの?」
「雪の中で何か月も眠っていて、寒くないの?」
そんな疑問を感じたことはありませんか。
実は、熊の冬眠では、体温が極端に低くなるとは限りません。
アメリカクロクマを対象とした研究では、冬眠中の体温は約30〜36℃の範囲で変動し、冬眠中期の平均は約33℃だったと報告されています。
一方、代謝率は通常時の基礎代謝率の約25%まで低下していました。
つまり、熊は体温を大きく下げなくても、エネルギー消費を大幅に抑えることができるのです。
この記事では、熊の冬眠中の体温や代謝の変化、心拍数・呼吸の特徴、小型の冬眠動物との違いをわかりやすく解説します。
熊の冬眠中の体温は何度くらい?
熊の冬眠中の体温は、活動期より低くなるものの、必ずしも外気温に近い温度まで下がるわけではありません。
その特徴は、冬眠中のアメリカクロクマを調べた研究からもわかっています。
冬眠中の体温は約30〜36℃という研究結果がある
2011年に発表されたアメリカクロクマの研究では、冬眠中の体温が約30〜36℃の範囲で変動していました。
また、冬眠中期の平均体温は約33℃でした。
私たち人間の平熱と比べると、やや低い温度ですが、氷点下のような低温になるわけではありません。
この研究で注目されたのは、体温の低下が比較的小さいにもかかわらず、代謝率が大幅に低下していたことです。
ただし、この数値はアメリカクロクマを対象とした研究結果です。
すべての熊が同じ体温で冬眠するわけではありません。
活動期と冬眠中の体温の違い
活動期の熊は、周囲の気温が変化しても、体温を一定の範囲に保つ働きを持っています。
冬眠中も体温調節の仕組みが完全に止まるわけではありません。
ただし、活動期より体温が低下し、心拍数や代謝率なども変化します。
活動期と冬眠中の違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 活動期の熊 | 冬眠中の熊 |
|---|---|---|
| 体温 | 比較的安定している | 数℃程度低下することがある |
| 代謝 | 活動に応じてエネルギーを消費 | 大幅に低下する |
| 心拍数 | 活動状態に応じて変化 | 低下する |
| 呼吸 | 活動状態に応じて変化 | 回数やリズムが変化する |
| エネルギー源 | 食べ物と体内の蓄え | 主に蓄積した脂肪 |
| 食事・飲水 | 通常どおり行う | 長期間行わないことが多い |

このように、熊の冬眠は「体温が大きく下がること」だけで説明できる現象ではありません。
熊の種類や環境によって体温は異なる
熊の冬眠には、種類や生息地域、気候などによる違いがあります。
例えば、寒い地域で長期間巣穴にこもる熊と、比較的暖かい地域に生息する熊では、冬の活動状態が異なる場合があります。
また、個体の年齢や体の状態、繁殖の有無なども、冬眠中の生理状態に関係する可能性があります。
そのため、冬眠中の体温を説明するときには、どの種類の熊を対象にした研究なのかを確認することが大切です。
熊はなぜ体温があまり下がらなくても冬眠できる?
熊の冬眠で特に興味深いのは、体温の低下が比較的小さくても、代謝率を大きく下げられることです。
体温の低下と代謝の低下は同じではない
体温とは、体の温度のことです。
一方、代謝とは、生命活動を維持するために体内で行われる化学反応やエネルギーの利用を指します。
一般的に、体温が下がると体内の化学反応の進み方も変化します。
しかし、体温が数℃下がったからといって、代謝率が必ず同じ割合で低下するわけではありません。
熊は、体温の変化だけでは説明できないほど、代謝を大幅に抑えることができます。
この特徴は、熊の冬眠を理解するうえで重要なポイントです。
冬眠中はエネルギー消費を大幅に抑えている
アメリカクロクマを対象とした研究では、冬眠中の代謝率が通常時の基礎代謝率の約25%まで低下していました。
これは、生命活動に必要なエネルギーの消費を大きく抑えていることを意味します。
ただし、代謝が完全に止まるわけではありません。
冬眠中も心臓は動き、呼吸も続いています。
体の働きを必要な範囲で維持しながら、エネルギー消費を少なくしているのです。

脂肪を利用して生命活動を維持する
熊は冬眠前に食べ物を積極的に摂取し、体内に脂肪を蓄えます。
冬眠中は、この脂肪を主なエネルギー源として利用します。
食事をしなくても、蓄えた脂肪を使うことで、心臓や呼吸などの生命活動を維持できます。
また、脂肪が体内で酸化される過程では「代謝水」と呼ばれる水も作られます。
そのため、脂肪はエネルギーだけでなく、水分の維持にも役立っています。
冬眠中の熊の心拍数や呼吸はどうなる?
熊が冬眠すると、体温や代謝だけでなく、心拍数や呼吸の状態も変化します。
ただし、心臓や肺の働きが完全に止まるわけではありません。
心拍数は活動期より少なくなる
冬眠中の熊は、活動期と比べて心拍数が低下します。
心拍数が少なくなることで、心臓の活動に必要なエネルギー消費も抑えられます。
ただし、心拍数は熊の種類や体の状態、測定条件によって変化します。
そのため、「冬眠中の熊の心拍数は必ず1分間に何回」と一律に説明することはできません。
呼吸の回数やリズムも変化する
冬眠中の熊は、呼吸の回数やリズムも活動期とは異なります。
代謝率が低下すると、体が必要とする酸素の量や、排出する二酸化炭素の量も変化します。
そのため、呼吸の状態も省エネルギー型になります。
ただし、冬眠中でも呼吸が完全に止まるわけではありません。
熊は、必要な酸素を取り込みながら生命活動を維持しています。
冬眠中も心臓や脳は働いている
冬眠中の熊は、長期間巣穴で過ごしますが、生命活動が停止しているわけではありません。
心臓は血液を循環させ、肺は呼吸を続けています。
また、脳の働きも完全に止まるわけではありません。
熊は冬眠中でも、外部からの刺激によって目を覚ますことがあります。
そのため、冬眠は単なる長い睡眠ではなく、代謝や体の働きが大きく変化した特別な生理状態といえます。

熊の冬眠はリスなどの冬眠とどう違う?
冬眠する動物には、熊のほかにもリスやコウモリなどがいます。
しかし、冬眠中の体温や代謝の変化は、動物の種類によって異なります。
小型の冬眠動物は体温を大きく下げることがある
一部のリスやコウモリなどの小型哺乳類は、冬眠中に体温を大きく下げることがあります。
種類や環境によっては、体温が周囲の温度に近いところまで低下する場合もあります。
このような冬眠では、体温を下げることがエネルギー消費の削減に大きく関わっています。
ただし、すべてのリスやコウモリが同じ方法で冬眠するわけではありません。
熊は比較的高い体温を保ちながら代謝を抑える
熊の冬眠は、小型哺乳類の典型的な冬眠とは異なる特徴を持っています。
熊は体温を極端に下げずに、代謝率を大幅に低下させることができます。
そのため、冬眠中でも比較的高い体温を維持しています。
この仕組みが、熊の冬眠を研究するうえで注目されている理由の一つです。

冬眠と普通の睡眠は何が違う?
普通の睡眠では、一定の時間が経つと目を覚まし、日常の活動を再開します。
一方、冬眠では、長期間にわたって代謝や心拍数などが変化し、エネルギー消費を抑えた状態になります。
熊は冬眠中でも目を覚ますことがありますが、その状態は通常の睡眠とは異なります。
つまり、冬眠は「長い時間眠っているだけ」の現象ではないのです。
冬眠中の体温と筋肉・水分の維持には関係がある?
熊の冬眠では、体温や代謝の変化に加えて、筋肉や水分を維持する仕組みも注目されています。
長期間動かなくても筋肉が衰えにくい
人間は長期間体を動かさないと、筋肉量や筋力が低下しやすくなります。
しかし、冬眠中の熊は、長期間活動を抑えていても、筋肉の量や機能を比較的維持できることが知られています。
その背景には、たんぱく質代謝の調節や筋肉の分解を抑える仕組みなどが関わっていると考えられています。
ただし、筋肉がまったく減らないという意味ではありません。
熊の筋肉が衰えにくい理由については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:熊の冬眠中、筋肉はなぜ衰えない?
脂肪の利用と代謝水の仕組み
冬眠中の熊は、体内に蓄えた脂肪を主なエネルギー源として利用します。
脂肪が代謝される過程では、エネルギーのほかに水も作られます。
この水は「代謝水」と呼ばれ、冬眠中の水分維持に役立っています。
また、冬眠中の熊は通常、長期間水を飲まずに過ごします。
そのため、代謝水の生成と水分の損失を抑える仕組みが重要になります。
関連記事②「熊は冬眠中に水を飲まない?脱水しない理由と代謝水の仕組み」では、この点を詳しく解説しています。
冬眠中の排泄や尿素の再利用との関係
冬眠中の熊は、通常、長期間排尿や排便をせずに過ごします。
その一方で、体内では尿素に含まれる窒素を再利用する仕組みが働くと考えられています。
この仕組みは、長期間食事をしない状態で、体内のたんぱく質を維持することにも関係している可能性があります。
ただし、尿素の再利用だけで熊の筋肉維持をすべて説明できるわけではありません。
関連記事①「熊は冬眠中にトイレに行かない?排泄しない理由と体の仕組みを解説」では、排泄と尿素の仕組みを紹介しています。

熊の冬眠中の体温に関するよくある質問
熊は冬眠中に体温が0℃近くまで下がるの?
一般的な熊の冬眠では、体温が0℃近くまで下がるわけではありません。
アメリカクロクマの研究では、冬眠中の体温が約30〜36℃の範囲で変動していました。
ただし、熊の種類や冬眠環境によって違いがあります。
熊は冬眠中に凍えないの?
熊は体温を調節する仕組みを持っており、冬眠中も体温が外気温と同じになるわけではありません。
また、体脂肪や毛皮、巣穴の環境なども寒さへの適応に関係しています。
ただし、どのような寒さでも影響を受けないという意味ではありません。
冬眠中の熊を起こすと体温は上がるの?
冬眠中の熊は、刺激を受けると覚醒することがあります。
覚醒に伴って、心拍数や代謝などの生理状態が変化する可能性があります。
ただし、体温がどの程度上昇するかは、熊の種類や状態によって異なります。
また、冬眠中の熊に近づいたり、意図的に起こしたりすることは危険です。
熊は冬眠中にずっと眠っているの?
熊は冬眠中でも、姿勢を変えたり、外部の刺激で目を覚ましたりすることがあります。
そのため、何か月も完全に眠り続けているわけではありません。
冬眠は通常の睡眠とは異なる生理状態です。
熊は冬眠中に心臓が止まることはないの?
健康な熊の通常の冬眠では、心臓が止まるわけではありません。
心拍数は活動期より低下しますが、血液の循環は維持されています。
また、呼吸や脳の働きも完全に停止するわけではありません。

まとめ|熊は体温を大きく下げずに代謝を抑えて冬眠する
熊の冬眠中の体温は、必ずしも極端に低くなるわけではありません。
アメリカクロクマの研究では、冬眠中の体温が約30〜36℃の範囲で変動し、代謝率は通常時の基礎代謝率の約25%まで低下していました。
今回のポイントを整理すると、次のとおりです。
- 熊の冬眠中の体温は、活動期より数℃程度低下することがある。
- アメリカクロクマの研究では、約30〜36℃の変動が観察されている。
- 体温の低下が比較的小さくても、代謝率は大幅に低下する。
- 冬眠中は心拍数や呼吸の状態も変化する。
- 筋肉や水分を維持する仕組みも、熊の冬眠の重要な特徴である。
熊の冬眠は、単に長い間眠っているだけではありません。
体温や代謝、心拍数などを変化させながら、エネルギー消費を抑えて冬を過ごす特別な生理現象です。
さらに、熊は長期間動かなくても筋肉を比較的維持できるという特徴があります。
その仕組みについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:熊の冬眠中、筋肉はなぜ衰えない?
参考資料・研究論文
本記事は、ナショナル ジオグラフィック日本版で紹介されている、アメリカクロクマの冬眠中の体温や代謝に関する研究内容を参考にして作成しました。
冬眠中の熊が体温を大きく下げずに代謝を低下させる仕組みについて、詳しく紹介されています。

