うなぎの数え方は、状態によって助数詞が変わるのが正解です。
生きているときは「匹」、食材なら「尾」や「本」、蒲焼きは「枚」や「串」、うな重のように切られた状態なら「切れ」。つまり、形や用途の変化に合わせて言い方も変わるという、日本語の粋が詰まった表現方法なのです。
日常でも「うなぎ2匹買った」と言いそうになりますが、スーパーなら「2本」「2尾」が自然。うなぎ屋なら「1串」「2枚」、うな丼なら「◯切れ」。こうした表現ができると、和食文化に通じたスマートな日本語になります。
本記事では、うなぎの状態に応じた正しい助数詞と、実際のシーンでの自然な使い分け、文化的背景、外国人への説明方法、そして英語表現までを、まとめてやさしく解説します。
読み終える頃には、「うなぎの数え方なら任せて!」と言えるはずです。
うなぎの数え方は「状態で変わる」

うなぎの数え方でまず押さえたいのが、生・下処理済み・調理済み・盛り付けという“状態”の変化です。これは単なる言葉遊びではなく、うなぎという食材が日本の食文化の中でどのように扱われ、愛されてきたかに密接に結びついています。
たとえば、生きて水槽の中を泳ぐうなぎは、魚としての生命力を持つ存在。そのため、金魚やドジョウと同じように「匹」で数えられます。
一方、下処理をされて食材として姿を変えた瞬間、うなぎは“食べ物としての存在”に移行し、敬意を込めた「尾」や、棒のように長い姿形に由来する「本」という助数詞へと変わります。
さらに、火を通し蒲焼きや白焼きになれば「枚」、串に刺されば「串」、そして食べやすい形に切り分けられ、どんぶりに美しく盛られれば「切れ」と、用途に即した表現が選ばれていきます。
この体系を理解すると、単に言い方を知るだけではなく、うなぎが食卓に届くまでの工程や、そこに込められた技と美意識まで感じられるはずです。
つまり、正しい助数詞を選ぶことは、丁寧な日本語を使うだけでなく、日本料理の精神を尊重する行為でもあるのです。
生きているうなぎ=「匹」
- 生物として扱うとき
- 例:生きたうなぎを2匹飼う
- 水槽で泳いでいる、活魚として出荷されるなど、“命ある存在”として捉える際に使う
- 魚全般に共通する基本の表現で、動物としてのニュアンスが強い
- 例えば、料理番組や漁の場面で「今日はうなぎを3匹獲りました」といった使われ方も
- 「匹」はあくまで生きている状態に限定される点がポイント
調理前の食材=「尾」or「本」
- すでに締めてある・食材として扱う場合
- 高級店では「尾」、関西では「本」が多い
- 例:うなぎ2本ください
- 「尾」は魚の姿形を尊重した表現で、丁寧なニュアンスがある
- 「本」は棒状の形に由来し、日常的で自然な言い回しとして浸透
- 真空パックや店頭で並ぶ丸ごとのうなぎに使うことが多い
- 迷ったら「本」を選ぶと失敗しにくいのが実践的なコツ
焼いたうなぎ=「枚」「串」
- 平らな蒲焼き→「枚」
- 串に刺された状態→「串」
- 例:蒲焼き2枚、白焼き2串
- **「枚」**は、蒲焼きのようにうなぎが平らに整えられ、美しく均一に仕上げられた状態を丁寧に数えるときに使われます。板のように広げて焼き上げられるため「1枚、2枚」と言うと、見た目の整った品をカウントするニュアンスが出て上品です
- 一方で**「串」**は、うなぎを串に刺して焼く伝統的な調理法に基づいた表現で、特に江戸文化が色濃く残る地域で一般的。串を用いることで、焼きの際に身が崩れないように固定するという役割もあり、「串」という数え方からも職人の技や調理の背景を感じることができます
- 店によっては「●枚」「●串」と使い分けが異なることもあり、関東=串、関西=枚といった傾向が見られることもありますが、あくまで料理の形状と調理法を意識すれば迷いません
- つまり、盛り付けの姿と加熱方法をヒントに選ぶと自然な日本語になります
切られたうなぎ=「切れ」
- うな重・ひつまぶしなど
- 例:4切れのうな重
- 「切れ」は、一口大にカットされたうなぎを丁寧に数えるときに使われる助数詞です。特に、うな重やひつまぶしのように、ご飯の上に美しく盛り付けられた形で提供される際に多く用いられます
- カットされたうなぎは食べやすく、食感や香ばしさを均等に味わうための配慮が込められており、そのひとつひとつの存在を「切れ」で表現することで、料理人の丁寧な仕事が感じられる表現になります
- また、SNSやレビューなどで「このお店のうな重は8切れも入っていた!」と書けば、ボリューム感や贅沢さを読者に伝えることができるため、実際の食べ手の視点からも便利な表現です
- さらに、同じ「切れ」という助数詞が、刺身などにも使われるため、和食全般に通じる表現として覚えておくと応用が利きます
迷いやすいシーン別の正しい言い方
うなぎの助数詞は、状態によって変わるという基本ルールがあるものの、実際の生活シーンになると「どれを選べば自然なの?」と迷う場面が多いものです。
特に、スーパーでの購入時や専門店での注文、持ち帰りや家庭での調理など、同じ“うなぎ”でも場面ごとに最適な言い方があります。こうしたシーンでは、ただ助数詞の知識を持っているだけではなく、その場所の文脈や、相手がどう受け取るかまで意識できると、より洗練された日本語表現になります。
たとえば、スーパーで「2匹ください」と言うと、店員さんに訂正されるほどではないものの、やや違和感のある響きになります。
一方、「2本」や「2尾」は自然で、特に日常会話では「本」を選ぶとスムーズです。また、老舗のうなぎ屋に行った際は、「◯串」や「◯枚」といった呼び方を使うと、店の文化や伝統に沿った表現となり、よりその場に馴染んだコミュニケーションができます。
そして、家庭でうな重を盛り付けたり、テイクアウトの折詰を数えたりする場合は「◯切れ」が便利です。
このように、“どこで・誰と・どんなうなぎ”かを意識しながら助数詞を選ぶことで、自然で気持ちのよいやりとりが生まれます。普段の買い物から、特別な日の食事まで、少し意識するだけで、言葉遣いの品がぐっと上がるのです。
スーパーでは「尾/本」
- 丸ごと:1尾/1本(姿がそのまま残っている場合)
- 真空パック:1本(加工されていても“棒状の形”として認識されるため)
- 活うなぎ売場:1匹(生きている状態なので「匹」が自然)
- そのほか、地域や店舗によっては「尾」を丁寧な表現として推奨する場合も
- 店員さんとのやりとりでは「本」が最も一般的で、自然で失敗しにくい
- 例文:
- 「うなぎを2本お願いします」
- 「今日は立派なうなぎが1尾入ってますよ」
- ポイント:スーパー=日常会話の場なので、堅苦しくない「本」が万能で安心
うなぎ屋では「串/枚」
- 関東:串文化が根強い。江戸前の伝統として、うなぎは串に刺し、火入れを均一にするために蒸し・焼きを重ねる技法が確立されています。その名残で、注文時は「◯串」が自然と使われます。例えば、老舗店の暖簾をくぐり「特上を2串」と頼むと、その店の空気にしっくり溶け込む表現になります
- 皿盛りの蒲焼き:枚。皿に美しく広げられた蒲焼きは、板状で整った姿から「◯枚」と数えるのが丁寧な言い方。特に関西寄りの店や蒸さずに焼く“地焼き”文化の店では、「枚」が好まれる傾向があります。例えば「蒲焼きを1枚追加してください」と言うと、品のある注文に
- 店による違いも楽しみの一つ。高級店では「尾」で通じる場合もありますし、串文化が強い店は「串」、丼中心の店は「枚」が多いという傾向があります。訪れる場所ごとの文化を感じ取り、表現を選ぶ楽しさがあります
- 例文:
- 「うなぎを2串お願いします」
- 「特上の蒲焼きを1枚ください」
- 「この店は串焼きだから“串”が自然だね」
- ポイント:提供形式・焼き方・店の格調に合わせて助数詞を使い分けると、和食文化への理解が深まり、“通”な印象に仕上がります
テイクアウトや家庭では「切れ」
- うな重・ひつまぶし→切れ
「尾」と「本」がある理由|文化と歴史
- 昔は「尾」が基本で、魚全体の姿を尊重する伝統的な表現でした。特に、江戸時代以前の和食文化では、魚を丸ごと扱うことが主流で、命をいただくという感覚が「尾」という丁寧な助数詞に込められていました
- 関西では「本」文化が定着し、これはうなぎの形状が棒状であることや、庶民の生活の中で日常的に親しまれてきた食文化が背景にあります。職人の技で大胆にさばき、香ばしく焼き上げる関西の“地焼き”文化とともに「本」という実用的かつ親しみやすい表現が広がったと言われます
- 江戸は串焼き文化で、川魚文化が盛んだった江戸の町では、串に刺して焼く手法が主流でした。そのため助数詞も「串」や「尾」がよく用いられ、特に江戸前うなぎでは蒸しと焼きを組み合わせる技法が生まれ、より繊細な扱いが求められました
- 文化・地域で表現が揺れるのは、うなぎが各地の食文化に深く根付いている証拠です。「尾」は丁寧さと格式、「本」は生活に溶け込んだ親しみ、「串」は伝統技と江戸の粋を象徴します。地域の食文化や歴史理解が深まると、助数詞の選び方にも自ずと品と深みが備わります
他の魚との比較で覚える
- サンマ・アジ=尾(細長い魚で、うなぎと同じく丸ごとの形がはっきりしているため、「尾」で数えるのが自然)
- マグロ=枚/柵(大きな魚で丸ごと一匹を扱うことが少なく、部位ごとに切り分けられるため「柵」や、スライスされた場合は「枚」など、状態に応じて柔軟に助数詞が変化する)
- 刺身=切れ/枚(薄切りの状態なら「枚」、厚みや一口サイズに切り分けられた刺身なら「切れ」。うなぎ同様に、料理方法と盛り付けスタイルで最適な表現が変わる)
こうして比較してみると、魚の大きさ、切り方、提供方法によって助数詞が変わることがよくわかります。特にうなぎは加工方法が多様なため、他の魚と比べることでよりイメージがつかみやすくなります。寿司や刺身の助数詞にも共通点があるため、和食全般の言葉遣いの習得にもつながるポイントです。
※表にするとより理解が深まる
外国人が迷うポイント
- flat? whole? piece?
- 助数詞は「形」より「状況」が重要
- 日本語学習者にとって、助数詞は最初にぶつかる“大きな壁”のひとつです。特にうなぎは、生き物から食材、料理、盛り付けまで姿が大きく変化するため、「どの段階のうなぎを指しているのか?」を理解しながら助数詞を選ぶ必要があります。英語では food・dish・piece・fillet などで表現できますが、日本語のように状態に細かく応じて言い換える文化はあまり強くありません。そのため、英語話者は「Why not just say eel?」と感じやすい一方、日本語ではこの“状況に応じた数え方”が自然で美しいとされています
- 例として、丸ごとのうなぎなら whole eel、切り分けたなら pieces of eel、焼きの一串なら eel skewer のように、英語では名詞を補足して説明する形が一般的です。一方、日本語では助数詞一語に文化とニュアンスが凝縮されるのが大きな違いです
- 会話例:
- Please give me one eel fillet.
- This eel bowl has 6 pieces.
- Could you cut the eel into smaller pieces?
- I tried grilled eel on skewers in Japan — it was amazing!
英語でうなぎを説明する
- eel(うなぎ全般)
- grilled eel=蒲焼き(日本の伝統的な調理法を説明する際に便利)
- eel rice bowl=うな重(海外では「rice bowl」を足すと伝わりやすい)
海外の人に説明するときは、単に「eel」と言うだけでは、うなぎという食材そのものを指すだけで、料理としての姿が伝わりづらいことがあります。特に、日本のうなぎ料理は“蒲焼き”や“うな重”といった独自のスタイルがあり、味付けや調理工程も文化的背景を持っています。
そのため、食文化として紹介したい場合は、「Japanese grilled eel」「eel rice bowl with sweet soy sauce glaze」など、調理法や味の特徴を補足する表現があると、よりイメージが伝わります。
さらに、日本のうなぎを説明する際には、うなぎのふっくらした食感や、タレの香ばしさなどを英語で表現してみるのもおすすめです。
- “soft and tender texture”
- “sweet soy glaze”
- “charcoal-grilled flavor”
例文:
- I ate Japanese grilled eel on rice. It was tender and delicious.
- This eel rice bowl has 6 pieces of eel.
- Japanese eel is usually grilled with a sweet soy sauce.
海外説明では「piece」「skewer」が便利で、特に「pieces of eel」「eel skewer」など、数量と調理形態を同時に伝えると、相手により正確なイメージが届きます。
例文で練習しよう
買い物:
- うなぎ2本ください
- 今日は少し大きめのうなぎを1尾お願いします
- 真空パックのうなぎを3本買っていきますね
- すみません、この天然うなぎは何本ありますか?
注文:
- 蒲焼き1枚お願いします
- 特上うなぎを2串追加でお願いします
- ひつまぶしを一つ、うなぎは細かく切れているタイプで
- 白焼きを1枚と、肝焼きを1串ください
SNS:
- 名店でうな重!ふわふわのうなぎが4切れ入ってた♡
- 初めての老舗うなぎ屋さん、香ばしい蒲焼きが2枚のってて幸せ……!
- テイクアウトのうな重、なんと8切れも入ってて満足度すごい
- 今日は奮発して天然うなぎ♪ぷりぷりの食感に感動…!
Q&A
- 冷凍うなぎは?→本/尾
- 真空パックされている商品が多く、丸ごとの形が残っているため「本」または「尾」が自然。
- 例:冷凍うなぎを2本買っておいたよ
- ひつまぶしは?→切れ
- 細かく刻まれて盛り付けられたスタイルのため「切れ」が適切。
- 例:名古屋で食べたひつまぶし、うなぎがたっぷり8切れ以上入ってた!
- 穴子も同じ?→ほぼ同じだが地域差あり
- うなぎと同じく「匹」「尾」「本」「切れ」を使うが、江戸前文化では穴子のほうが主役になるため表現にこだわる人も。
- 例:江戸前穴子の白焼きを1枚お願いします
- うなぎ寿司は?→貫/切れ
- 握りなら「貫」、細かく巻かれたものや押し寿司なら「切れ」が自然。
- 例:うなぎの握りを2貫
- お土産の蒲焼きは?→枚
- パックで1枚ずつ個包装されているケースが多い
- 例:手土産に蒲焼き1枚買いました
- 活うなぎの取り扱い注文は?→匹
- 店舗で料理前の活うなぎを注文する場合は「匹」でもOK
- 例:活うなぎを3匹仕入れました
まとめ
- 生き物→匹
- 食材→尾/本
- 調理→枚/串
- 盛り付け→切れ
うなぎは、同じ一匹でも、命ある姿から、料理人の手を経て食卓へと運ばれるまでに、形や意味合いが少しずつ変化していきます。その過程に寄り添うように、助数詞も繊細に変わる——それこそが、日本語の面白さであり、食文化の豊かさです。
「どんな状態のうなぎなのか?」を思い浮かべながら使い分けると、語感にも深みが生まれ、より自然で美しい日本語になります。
また、迷ったときに頼りになるのが「本」。シーンを選ばない万能型の助数詞で、特に日常会話では品よく使える便利な表現です。もちろん、伝統的な文化や地域の違いに合わせて「尾」や「串」「枚」を使いこなせれば、さらに“通”な印象に。料理人の技や歴史的背景に思いを馳せながら、表現に変化をつけてみましょう。
迷ったら本が無難!
うなぎの数え方は、単なる言葉遣い以上に、日本が大切にしてきた“食への敬意”や“丁寧な心”が宿っています。
こうした助数詞を使い分けることで、和食文化の奥ゆかしさに自然と触れられるはず。ぜひ、日々の会話や食体験の中で楽しみながら、自然な日本語を使いこなしましょう。

